2014年4月30日水曜日

つつきすぎ

 コツコツと木を叩く音がするな、と思ったらコゲラが必死に巣作りしているのが見えた。部屋からでもすぐそこの欅の枝をつついているのが見える。しかし必死だ。朝から夕方まで時々休みつつ、ひたすらつついている。見ているこっちが心配するくらいの勢いでみるみる穴は大きくなり、こちらが気付いてから3日ほどですっかり身体が入るくらいになった。今度は中から巣穴を大きくしているのだろう、時々穴から顔を出して嘴で木くずをはき出す仕草がとてもけなげでカワユい。我が家の野鳥観察図鑑によると、コゲラは雀よりも少し大きいキツツキ科の仲間で、「Japanese Pygmy Woodpecker」とも呼ばれ学名の一部の「kitzuki」は本種を記録した時の標本の採集地が大分県杵築市だったことなど、日本人には昔から馴染みのようだ。どうやらつがいのようで、もう一匹はそばをちょろちょろしながら心配そうに(?)作業を見守っている。これで毎日様子が楽しめると思っていた矢先、庭先で大きな音!なにかと思ったら、どうやらコゲラが頑張りすぎたようで、枝が折れてしまったのだ。もともと掘りやすい朽ちかけたところを選んでいたのだと思うのだが、いくらなんでも頑張りすぎ?彼女にイイところを見せたかったのか?


2014年4月20日日曜日

すっぴん

 クルマの話を少々。89年式プジョー309GTI。205というコンパクトなハッチバックは日本でも一世を風靡した感があるが、この309はほとんど見かけたことが無い。309と言えば、クルマを長く乗るヨーロッパではいまでも現役バリバリでタクシーなんかにも良く使われている。一昨年南イタリアを旅した時にも3〜4台は目にした。コンパクトな205を大人4人が座れるようにホイールベースをストレッチしてトランクをくっつけたような、昔でいう3ボックスなれど、2ドアでノッチバックという、謎のデザイン。リアウインドーごとガバッと跳ね上がるノッチバックは意外と使いやすくて、可倒式・完全フラットのリアシートを畳めばかなり大きな荷物も飲み込めるのだ。つまりファミリーカーとして設計されているのだが、このGTIは1.9LのただのOHVから130馬力、185/55/15という当時としてはかなり大径&扁平のタイヤを履いた、走りにこだわったグレードだ。5速・100km/hで3000回転近く回ってしまうローギヤード設定と、今の常識からすれば「超軽量」といっていい970kgの軽量ボディーのおかげで、のけぞるような加速は強烈だ。オールアルミのエンジンでシングルカムのおかげもあって軽いボンネットは重心も低く、ほとんどロールしない足回りで回頭性が高くアンダーステアとは無縁だ。このスペックでも、ストロークたっぷりのサスペンションのおかげで乗り心地が良いのがフランス車の矜恃といったところだろうか。マニュアルミッション、電子デバイスなし、エアバッグなし、衝突安全基準なんてだれも気にしなかった時代の、今では考えられないような本当に「素」のクルマだ。
 普段はすでに17万キロを越えた98年式パサートワゴンに乗っているのだが、興味深いのは89年-98年のこのあたりの10年でクルマはメチャクチャ進化したということだ。すでに16年前の年式とはいえ、エアバッグ(シート含む)、電子制御の入ったAT、トルク制御デフ、ABS、無線式ドアロック、サイドインパクトビーム、前後クラッシャブルストラクチャー、などなどほぼ現代の標準が揃っている。最新技術では自動ブレーキだとかアンチスリップなどのアクティブセーフティー系が目白押しだが、これはクルマの進化というよりはコンピュータとセンサの進化といっていい。走る、曲がる、停まるの基本性能はこの10数年ほとんど変わっていない。快適になり安全になったことは結構なことだが、クルマに乗っている、というより乗せられていると感じるクルマばかりなのは、クルマが完全に大衆化した証なのかもしれないが、走りを優先した高性能車であっても、ドライバーをサポートするなにがしかの電子制御を完全に断ち切ることができるクルマは皆無(ケーターハムが軽のセブンを出すらしいが。。)な現代で、309のこの「素」な構成は本当に貴重で、個人的な思い入れ以上にクルマの文化史的な意味でもコンディションを維持して乗り続けたい、ということで車検を通す正当な理由としよう。


2014年4月13日日曜日

自然の恵みは蜜の味

 「イタヤカエデ」という木からメープルシロップみたいなシロップが採れるらしいよ、と嫁さん。なんのことはない、ウチにあるやん、ということで早速採取の方法を調べてみたところ、雪が残る冬の終わりごろから3週間ほどしか採れないという。ん?もう遅いか、と思いながらも春になって樹木が休眠状態から醒めて根から水分を吸収し始める時期、と考えれば今はまさにその春の息吹をあちこちで感じる季節なので、とりあえずやってみたところ、出るわ出るわ、ドリルで深さ5センチくらいの下穴を開けたところに差し込んだ真鍮パイプから1秒に一滴くらいのスピードでポタポタと。無色透明なのが意外だったけれど3時間ほどでカップ一杯採れた。この調子でいけば。。と皮算用しつつペットボトルに付け替えたところ、夕方4時くらいからは出なくなった。木も一日のサイクルで生きているのだ。おやすみ、ご苦労様、と自然の恵みに感謝しつつ、さっそく煮詰めに。シロップにするには35〜40分の1に煮詰める、つまり採れた量の約3%の分量のシロップにしかならないのだ。今回はカップ1杯くらいだったので結局できたシロップは5ccほど。悲しいくらい少ないけれど、金色に輝いて、さわやかで雑味の無い清々しい甘みで絶品でした。