2013年6月30日日曜日

刈り込み

 さすがに3年も経つと周囲の雑木もモクモクと伸びてくる。日当たりは悪くなるし、いずれは屋根掛かりしてきて、強風で折れた枝で屋根が傷むことも考えると、あまりのんびりもできない。まずはということで、新調した3mの高枝切り鋏の届く範囲で刈り込み。3mというのは手で扱うには十分に長いが、自然のスケールには不十分だ。手の届く範囲で刈り込めば、人の動く範囲は快適にはなるものの、もっと高いところはどうにもならず、いずれは植木屋さんに頼むか、登るか、切り倒すか。この冬は思い切った判断が必要になりそうだ。ともあれ、今日は終日二人で刈り込み。

このところの雨続きで一斉に陸に上がってきたのか、あちこちに青蛙がピョンコピョンコしている。蕗の葉のまわりで遊ぶ姿は思わず「鳥獣人物戯画」を連想させる。ああ、この時期に描いたなと。


2013年6月25日火曜日

バードウォッチング

 双眼鏡を買った。宝庫とまでは言わないが、時折カワセミを見かけたり、目を疑うほどブルーが鮮やかなオオルリなんかがやってくるので、やっぱり近くで見てみたくなるのは人情というもので、色々と物色してみたところ、性能と価格とのバランスがいいのが見つかった。ヨメさんにはやや大ぶりなのが難点だが、視野角はクラス最大、周辺視野にはやや収差が見られるものの、中央部分のクリアな感じと明るさは特筆モノで、遠くの景色に今にも触れられそうな迫力はただ覗いているだけでも楽しい。バードウォッチングにはあまり興味はなかったが、これで姿をバッチリ捉えられれば、それは夢中になるだろうことは容易に想像がつく。釣りと同じ(?)で、デバイスが介在した途端に自然との関係が変化するタイプの経験かもしれない。まだ本格的に綺麗な野鳥をその視界には捕らえられていないが、もしお目当ての獲物が見つかったときには、そのまま写真に収めたいだろうな、、と想像していたら、なんのことはない、そういう商品があるのだ。しかも複眼なのでフルHDで3D撮影、動画も記録できるとか。いやはや。

2013年6月11日火曜日

工芸にこそデジファブの力を!

 3Dプリンターが話題だ。最近メディアで取り上げられることも多いこの技術は、コンピュータで設計した3次元のかたちをそのまま合成樹脂などの立体物として造形するというもの。パソコンのモニターに映し出される単なる情報としてのかたちを、実際のものとして手に取ることが出来るということで「魔法の技術」として紹介されることも多いようだ。
 近年こうした機材が個人でも買えるような価格になり、デジタルファブリケーションとも呼ばれる、パソコンと連動したこれらの機材を使ったもの作りが身近になってきた、、とはいえ、全ての人にとってすぐに始められるものでもなく、まずは体験ができる市民工房のような場所が世界中に立ち上がっている。
 ここ仙台にもつい先日、仙台駅前に工房がオープン、さまざまな人がさまざまなもの作りを実験的に行い、インターネットを通じてその経験や工夫を世界中の仲間と共有して、新しいもの作りの可能性を探っている。
 パソコンのプリンターは家庭を印刷所に変えた、とも言われるように、デジタルファブリケーションが家庭を小さな工場にする可能性を秘めているという研究者もいる。個人のもの作りの在り方を大きく変えるかもしれないこの技術は、実は工芸職人さんにとって、とても大きな可能性を秘めている、と僕は予測している。

 工芸は手を尽くしてもののたたずまいを整える仕事だ。パソコンでいくら簡単にものが作れるとしても、実際のものが手触りやたたずまいにおいて魅力的でなければ、それには価値がない。この点でこうした工房の運営者の多くが、工芸技術との取り組みを切望している。一方で、職人さんたちにとって、これらの技術はどこか縁遠いものと捉えられがちのようだが、この人たちにこそ使ってもらいたい。
 現在、東京藝術大学陳列館にて、「Materializing展」が開催中だ。「情報」と「物質」のもはや不可分な関係を、様々な事例展示を通して探る展覧会だ。23組の建築家やデザイナーといった出展者の中で唯一の工芸家として、僕も参加している。工芸とデジタルファブリケーションの事例として、新しい工芸の可能性として道が拓ければと思う。

2013年6月3日月曜日

関係を調整する仕事

この1年ほど、ある木造の建築賞の客員審査員を務めてきた。インテリアや建築空間のアートワークなどで建築の現場の仕事はするし、研究活動でも建築家とのお付き合いもあるし、なにかと建築と関わることが多いとは言うものの、建築作品そのものを専門的視点から評価できるわけではない。それでも、住空間に漆を活かした暮らしをしているという視点で忌憚のない意見を聞きたい、ということでお声がけ頂いた。お世話になっている先生からのお話だし、いい経験かと思ってお請けした。

書類審査に始まり、公開プレゼンテーション、現地審査に最終審査会と、この半年ほど、いつにも増して建築についてじっくり向き合う機会があった。

森林面積が7割の我が国で、国産木材が過小評価されていること、エネルギーのこと、建築を軸に地域が繋がる、その繋がり方が変わるだけで地域に眠っている、またはうまくまわっていないリソースが再び機能しはじめる事例など、たくさんの「建築」の事例に出会った。わかってはいたつもりだが、あらためて建築とは、単なる技術ではなく、関係を調整する仕事なのだと思う。それは利害だったり、環境だったり、人と人だったり、人と空間だったり、その関係の在りようは様々だが、とにかくその関係を調整しまくる仕事なのだ。それも創造的に。

光栄なことに、各賞のトロフィーを制作させてもらえることになった。木の建築に対する賞とはいえ、単純に木材で作るというのも芸がないし、なにより漆の多様な姿を感じてもらいたいと思って、朱塗りの台座にたこ糸を漆で球状に固めた線状乾漆(そんな用語はありませんが)が鎮座するという構成に。台座には本体の球の曲率にぴったり合った彫り込みがあるので、また本体のアクリル板の銘板がそこそこ重量があって起き上がりこぼし的に安定もするので、以外と「すわり」はいいのだが、授賞式ではみなさん、授与される際に恐る恐るという手つきでした。緊張の場面で気を遣わせてしまってすみませんでした。でも、飾るだけでなく是非手にとって漆の肌触りを感じてもらえれば、とスピーチしてきました。受賞者のみなさま、本当におめでとうございました。