2013年12月31日火曜日

It's all yours.

 毎年嫁さんが干支にちなんだ小さな置物?を買ってくる。来年の午は仙台の堤人形で。堤人形は元禄時代に始まる300年ほどの伝統を持つ。一子相伝ではなく形式を守りながらも多くの人形師によって受けつがれた堤人形は、伝統芸ながら時代の変化や廃絶の危機を乗りこえるだけの多様性を持っていたということだろう。一子相伝であることで守られるなにかがある代わりに、時代を生き抜く逞しさが失われては元も子もない。
 「堤人形は浮世絵が立体化したといわれるほど、造形力と描彩に秀で、蘇芳(黒っぽい赤)を基調とした配色、愁いを持つ表情と姿態は素晴らしく美しい。」と目録にもあるとおり、見よ、このおじさんと馬のなんとも絶妙な表情!

紅白歌合戦を背景に張子の巳から「あとはよろしく(It's all yours)」とバトンタッチの大晦日。

2013年12月29日日曜日

リビングの調理器具その2



 ああしておけば良かった、こうしておけばもっと使いやすかったのに、と後からあれこれと気がつくのが自前の普請というものだ。できればストーブも煙突を背面から出しておけばよかった(上面をすべてコンロとして使える)、とか、炉内で調理ができるタイプがよかったとか、言い出せばキリがない。それでもせっかくのエネルギーを使わないテはない。この時期じっくりと調理する必要のあるおせち料理やSTAUBを買って喜んでる僕らにはストーブは格好の調理器具となる。以前にも出来合のピザを焼いてみたことがあったが、ストーブにそっくりそのまま入れられるグリルパンを手に入れたので、早速テスト。
 生地練りはパン焼き機に任せる軟派なれど、トマトソースは前日に仕込んだプッタネスカ、チーズはグリュイエール、ゴーダ、ブルーチーズ、カマンベール、パルメジャーノ、ハーブはフレッシュバジルにルッコラと、ひと通り揃えていざストーブへ。ほんの5-6分で良い具合に焼き上がるので、次々とレシピを試したくなる。今夜は定番マルゲリータに続いてトマトソースを使わないピッツァ・ビアンカ。4種のチーズにアンチョビ、サーディン、焼き上がったところにルッコラをパラパラと、ピンクペッパーで仕上げ。これは絶品でした。

2013年12月21日土曜日

基本は同じ

 チェーンソーはその名のとおり、「ソー」つまり原理的にはノコギリだ。小さなノコ刃が高速で回転する。木材との摩擦で刃は高温に晒されるので冷却のために自動的にオイルが供給される仕組みだ。それでも当然、刃先は徐々に摩滅するので切れ味が悪くなってくる。切れなくなった刃物は研ぐしかない。研ぐと言ってもチェーンソーの場合はいわゆる「目立て」だ。ノコギリの目立ても「目立てヤスリ」というヤスリで行うのだが、チェーンソーには丸い目立て用のヤスリがある。どんな刃物も研ぐ際には刃物と砥石やヤスリの角度や位置関係が変わらないようにするのが肝心だ。これが「キマらない」と切れ味は良くならない。チェーンソーの場合はチェーンのひとコマひとコマに刃が付いているので、研ぐ際に刃が動いてしまってとても研ぎにくい。そこでこの目立てゲージなるものの登場である。これで刃の付いたチェーンの前後のコマをしっかり押さえることで刃が固定され、さらにヤスリが一定の高さで動かせるスグレものだ。以前は手間を惜しんで、電動ルーターの先端にダイヤモンド砥石をつけたもので研磨していたのだが、どうしても刃先を焼きなましてしまって切れ味が長続きしなかった。やっぱり刃物はじっくり感触を頼りに手で研ぐの方が、結局は切れ味も長続きするし、刃物そのものも長く使えるのだ。先日、刃先がほとんど無くなるくらいに小さく(研いで研いで長く使っている)なっているのに抜群に良く切れる本職のチェーンソーを使った時に、ああやっぱしそうだ、とあらためて認識した次第。刃物なのだと。



2013年11月30日土曜日

今年の総括というには少し早いが

 最近「3Dプリンター」や「レーザーカッター」を使うデジタルもの作りが話題だ。こうした機材を市民が自由に使えるような環境を整備した社会包摂型の市民工房、通称ファブラボが世界中に立ち上がり始めている。日本でも鎌倉や渋谷、仙台や大阪などで運営が始まっており、運営者は民間や大学、行政など様々であるが、お互いに情報を共有しあいより良い在り方を探っている。こうしたネットワークは世界にも広がっており、世界中のファブラボから代表者が集まって情報交換と勉強会の合宿のようなイベントが毎年どこかの国で開催されている。9回目を迎える今年の「Fab9」は横浜が会場となり、慶應義塾大学の田中浩也先生が中心になって8月の最終週に開催された。詳細はこちらから→

 Fab9では「Hybrid Craft」と題して講演させて頂いた。39ヶ国から250名あまりのFabLab代表者に向けて漆掻きからデジタルデザイン、そしてその実践までを駆け足でお話した。

 Hybridなどと題してみたものの、そもそもクラフトはハイブリッドな営みなのだ。自然の素材とあの手この手で格闘し、自然現象をなだめすがめつ操作し、なんとかモノに落とし込む、そのために様々な道具や技術を駆使する、つまりハイブリッドでアクロバチックな営みなのだ。だから、クラフトをよく理解している人にとっては、なにをいまさらハイブリッドなどと威張っているの?と問い詰められそうなものなのだが、なぜかこれまで一度もそういう審問に晒されたことがない。さておき、ハイブリッド感が漂っているようではまだまだ、と言われても仕方がないのである。

 最後には「I don't walk away from Craft although I'm really interested in digital fabrication and contemporary technologies.」と結んだ。以前イギリスに居た頃に、ある人からあなたはそういう人ね、といわれた際の表現をそのまま使わせてもらった。デジタルやテクノロジーに興味があっても軸足はクラフトなのです、ということをうまく表現してくれたと思って、英語ではいつもこう言う。

 つまり、デジタルもテクノロジーも素材を取り扱う者にとっては道具なのであり、道具そのものの存在感が際立つようでは、クラフトとしての意義は薄い。コンピューターもレーザーカッターも金槌も鋸も、使いこなしてこそ、つまり、その痕跡のようなものが不用意に残っていてはその道具に「使われている」のであり、その道具でなければ実現できないかたちや佇まいが、その技術の痕跡が高度に透明化されることで立ち上がってこそ、はじめて「使う」ということの意義が確からしくなる。「技術が透明化することで立ち上がる」とは非常に逆説的だが、優れたクラフトの仕事とはそういうものなのだ。その点、僕もまだまだアルゴリズムのデザインをうまく使いこなせていないなと、6月のMaterializing展や今回のFab9を通じて感じた。


 ともあれ、デジタルファブリケーションにとって工芸は豊穣な大地であることは変わりないと思う。と同時に工芸にとってもデジタルファブリケーションは新しい表現のため可能性の沃野であると思う。そういうメッセージが伝えられれば、といつも思う。

2013年11月22日金曜日

晩秋にして因果を想う


 今年は紅葉が綺麗だったと思う。全国的に秋が短いという長期予報を耳にしていたが、寒暖の差が大きいと紅葉が進むという定説?とは整合している。去年はどうにもくすぶったような色合いだったなと思い返してみれば、この家の工事をしていた3年前は目にもまぶしいほど鮮やかで、真っ赤に色づくモミジを背景に凜々しい大工さんの写真を撮って、大伸ばしのプリントにして工務店に差し上げたことなどを思うと、紅葉の色合いは年によって微妙に違うようだ。紅葉とは関係ないが、今年はこの時期悩まされるカメムシも圧倒的に少なかった(一昨年はブログに書くほど多かった)し、井戸水の断水頻度は高いし、、ん?全ては関係あるのかも知れない。自然の大きな大きな流れの中で紅葉もカメムシも井戸水もひょっとするとひとつの因果によって動的平衡を保っているのかも知れない。

2013年11月9日土曜日

ないものはつくる

 宮城県には漆塗りの文化財が多い。にもかかわらず、修復に使う漆を生産していない。これは困ったものだということで、宮城県で国産漆を育てようという取り組みを始めたことは以前にも書いたかも知れない。ウルシ(樹木としての漆はウルシと書く)の木は江戸時代には「畑の五木」などと言われ、桑や茶などとともにもともとは人里近い平地に植えられていた木だ。ウルシは生産性が低く、かぶれるなどの理由から山林へ追いやられてきた。現役の漆掻き職人さんたち(いずれも70-80歳という高齢)でさえ、ウルシは山の木だと思っている方も多いという。つまり、それくらい長い時間、ウルシは誤解されてきているということだ。
 ウルシは浅く広く根を張る樹種で、つまり、地上では広く枝葉を広げる木だ。ところが山林では木が密集していて枝葉を広げられずに、つまり、根が広く張らずに上へ上へと細く長く伸びるしかない。本来の生育状況とは違う状態の木は決して本来の性質を保っているとは言いがたく、病気の原因ともいわれている。広間隔(8-10m)でゆったりと植えればノビノビと育ち、樹間の下草刈り(山林ではこれが重労働)もゴルフ場や果樹園で使われる乗用草刈機を使えば楽ちん、漆が採れるようになるまでの数年間は、ワラビなど他の作物栽培も可能、近い将来には山の宝ともいうべき漆が採れる。。。と良いことづくめなのだが、問題は場所の確保。10m間隔で100本植えようとするとそれだけで1haが必要になる。かぶれる心配もあるのであまり人里に近いところは避けたい、と条件を考えていくとなかなか理想的な場所というのは見つからない。
 そこで思いついたのが震災によって耕作放棄された沿岸部の土地だ。幸いというか、浸水した地域からは人の営みは離れつつあり、でも賑わいは取り戻したいという地域の方々の複雑な思いにうまく寄り添えるのではいか、ということで地権者の方々に相談してみたところ快諾を得て、いよいよ年内にウルシを植えられることになった。
 場所は山間の扇状地で日当たりもよく山からの豊富なミネラルを含んだ水はけの良い土壌で、技術協力してもらっている研究員によればまさに理想的だ。今日はまずは整地、に先だつ立木伐採、に先立つ除草作業。4人がかりで半日で終了。草が枯れるまで二週間ほど待って、次は立木の伐採。整地というほど荒れてないので伐採が済めばおおよその準備完了。別に育てているウルシの苗木が落葉するのを待っていよいよ来月には植樹だ。

2013年10月27日日曜日

敷居は低い方がいい その2

 先週に引き続き、今回は鎌倉で漆のワークショップをしてきた。FabLabKamakuraは移築してきた蔵をリノベーションしたデジタル工作機材を備えた市民工房だ。もの作りを通して地域や学びといった本当の意味での「生きるちから」を育てようと様々な取り組みを行っている。自分で考えても分からないことは物知りに聞く、手で出来ない時には道具を使う、ということは何百年も行われてきていることで、これが現代では物知りはインターネットになり、道具はデジタルファブリケーションになったのだから当然これらの機材は当たり前のように整備されている。だからといって、それだけでもの作りができるというものではない。同じ時間、場所、空気を共有して、手から手へと直接でなければ伝わらないことが圧倒的に多い。「漆は塗料なのでとにかく塗りましょう」といっても、じゃあ、漆の基本的な扱い方は?みたいな身体の使い方はやっぱり技術のある人の「身振り」「手つき」を見て学ぶのがてっとり早い。今回は漆と顔料を混ぜ合わせることから始めた。混色にはヘラを使うのだが、市販のナイロン系プラスチックだと「コシ」がなくて使いにくく、金属系は堅すぎてこれまたダメ。結局自分の手に合った硬さになるように切ったり削ったりできる木がいい、ということになる。今日はこのヘラ作りから。あとは自由に好きな色を作って好きなものに好きに塗りましょう!というワークショップ。

 口々に聞かれたのが、「こんなに簡単に始められるんですね」「意外に簡単」という感想、つまり漆に対する敷居の高さを先入観として持っていた、ということだ。確かに伝統工芸的な世界ではきっとこんなに簡単には漆を塗らせてもらえないだろうし、道具の仕立てももっと精密に指導されるはずだ。美術大学でさえそうだった。もちろん「伝統」を墨守することでしか守れない価値はあるから、それはそうであるべきだし、そこはきっちり垣根を作って高い敷居を設けておくべきだ。そしてそうした価値観のもとに生み出されるものに憧れる人はそういう道を選べばいいのだ。
 一方で、そういう価値観でなくても漆は漆として存在し、自由に使われるべきだ。使われる権利があるといっても良いかもしれない。伝統工芸の世界はどこか同調圧力のようなものが働き全体としての制度が力を持つとても日本的な仕組み(重ねて言うがそれは本当に必要なもの)だが、可能性の広がりを求めるならもっと民主化しても良いと思う。漆を使う人の数だけ可能性がある、つまり多様であることが種の保存には有利なのだから。技術の民主化とも呼べるデジタルファブリケーションの隆盛は素材の民主化とも呼応して、これからもっと新しい可能性を見せてくれると思う。

 勢い余って?電子回路に漆を塗りだした青年が「漆って絶縁ですか?」と聞くので、おそらく絶縁でしょうと答えたが真偽は不明だ。でもきちんと研究すれば何か新しい性質が発見できるかもしれない。3Dプリントしたヨーダにピンクの漆を塗ってキャーキャー騒ぐ主催者。ヨーダはさておき、3Dプリントに最適化された漆の調合が見つかるかも知れない。漆xシルクスクリーンは「枯れた」技術ではあるが、初めて触れた漆体験がシルクスクリーンだった革職人はこれからどんな世界を見せてくれるだろう?とにかく始めてみないことにはなにも分からない。そのためには敷居は低い方がいいに決まってる。



2013年10月22日火曜日

敷居は低い方がいい

 「漆をやってみたい」という声は良く聞くが、漆はかぶれるとか、材料が高価だとか、ホコリのないキレイな場所が必要だとか…説明している方でもこれじゃ敷居が高いよね、と思わずにはいられない。なんとか敷居を低くする方法なないものか、と色々と取り組んでいる中に、「乾漆シート」がある。これは綿布を漆で固めて表面を漆塗りにした、塩ビ程度の柔軟性がある約1mm厚の「板」だ。この作品のために作っている材料だ。これを作るにはそれなりの技術が必要で、ここから作れというとそれこそ無理なので、職人さんに作ってもらうのだ。この作品を作りながら、これさえあれば誰でも漆を体験できるのでは?と思いついたのがきっかけ。そこで今話題のFabcafeに持ち込んだところ、是非やりましょうということで実現した。レーザーカットしたりレーザー彫刻したり、加工は自由。敷居が下がったところで思いきって金箔も貼ってみよう!ということになり、職人さんまで引っ張り込んで、おそらく世界初?のレーザー沈金ワークショップを開催した。漆どころか、コンピュータでデザインすることさえ初めての人でもiPadでお絵かきすればできてしまうシステムにした。レーザーカッターを使うワークショップの多くがカットした材料を組み立てる程度なのに対して、今回はカットした乾漆シートを磨くことによって更に「漆感」が増したり、金箔を貼って磨いたりと、素材感がタップリ体験できるのが特徴だ。沈金だけではなくカットした部品でアクセサリーを作るワークショップもみなさん楽しそうでした。アンケートによるととても好評だったようなので、ひょっとすると続編があるかも?すでに何カ所かワークショップのリクエストが来ているので、そのうちみなさんの近くでも開催されるかもしれません。機会があればみなさんも是非!







2013年10月7日月曜日

秋の営み

夕方に自転車散歩に出た。
稲刈りが終わった田んぼを切り裂くように我が家に続く農道。この両側の田んぼでは様子が違う。その違いとは?

右が専業農家で左が趣味の米作り。専業農家では稲刈りと脱穀が一度に行われて、農協で集約的に機械乾燥にかけられるので、田んぼにはなにも残らない。一方、趣味の米作りでは稲杭(イナグイ、イネグイ)を組んで天然乾燥させるので、この櫓が建ち並ぶ。実は専業農家でも自分で消費する分は天然乾燥させるのだそうだ。やっぱり味わいが違うらしい。季節の景色としての味わいもやっぱり稲杭はとてもイイ。自然に働きかける人の行為が「営み」というカタチで目に見えるのはとても安心感がある。

少し行くと別の田んぼでは籾殻を蒸し焼きにしていた。ブスブスと煙を上げながら、こちらも秋の景色を作り出していた。辺り一面では少し鼻につんとくる炭焼きの燻した香りと金木犀の甘い香りが秋の空気の主導権争いをしていた。


2013年9月29日日曜日

鳥も楽しそうで

 何をするわけでもなく、そこに居るだけでなんとなく気持いい、という日は年に何回あるだろうか?今日はまさにそんな日だ。気温21度、湿度55%。緑が楽しめるのもそろそろ終わりに近づいているようで、あちこちで実がなってる。隣の田んぼでは稲刈りも始まった。収穫の秋だ。最近気付いたことだが、夏の間は野鳥があまり居なくなる。そういえばまた賑やかになってきたなと思って、外を眺めているとコゲラやキビタキ、セキレイといった春に見かける常連さんが戻ってきている。。と思ったら大きな鷺が川に舞い降りた!これはアオサギ。舞い降り、飛び立つその姿はどこか神々しいところがある。このアオサギものんびり気持ちよさそうだった。


2013年9月23日月曜日

紅葉が始まった

 紅葉が始まった。通年で木々の様子を観察していて、5月末〜梅雨入り前までは新緑の勢いがあるが、梅雨が明ける頃からはそれ以上には葉は茂らないことが分かってきた。7月まではどんどん葉を広げるが、あとは通年のスパンでいえば、いわば枯れていくプロセスにある。緑の鮮やかさは徐々に失われ、台風が過ぎる頃には黄変が始まる。気がつけば赤くなってるものがある。一番最初に紅葉を始めるのはサクラのようだ。

2013年9月20日金曜日

漆の精製

 山形に漆を見に来た。東北は漆の産地として有名だが、宮城県は漆を一滴も生産していない。漆塗りの文化財が東北一多く現存する宮城県が、その原料たる漆を生産していないのはいかがなものか?ということで、震災で耕作放棄されている農地に漆の木を植えようという計画がある。ウルシ(樹木としての漆はウルシと書く)は人里離れた山間部にひっそり、というイメージだが、時折「漆畑」という地名や名字があることからも分かるように、ウルシは実は畑に植えられていたものである。江戸時代には、茶・桑・楮、三椏(こうぞ、みつまた:紙漉きの原料)・桐・漆は五木と称して畑に植えてよい樹木とされていたそうだ。いわゆる園芸種として平地に伸び伸びと植えて人が手をかけてこそ、健康に育つということを提唱している研究者や民間の活動家がいて、彼らのフィールドを見せてもらいに山形へ来たのだ。文化財の修復の現場では、去年山形で採れた漆をくろめていた。「くろめ」とは、生漆(濾過してゴミを取り除いたもの)を天日にあててゆっくり攪拌し、水分を蒸発させる作業のことである。最初は白濁していた漆が4-5時間でゆっくり褐色透明に変化していく様は、作業をしていた方をして、畏敬の念を抱くと言わしめるような、神秘的なものだ。この日本産漆で拭き漆をすると、ほんのりワインレッドに仕上がるのだ。中国産では決してこういうエレガントな色にはならない。この現場は風呂場で水回りの厳しい環境にも関わらず、漆が施されているおかげで138年間も腐らずほぼ当時の輝きを今に伝えている。この地、山形に30年前に植えられたウルシから採取された漆が、いまも息づく文化財をこれからも守っていく、まさに究極の地産地消であり、人の営みも含めた文化財保護である。


2013年8月14日水曜日

薪置き場のエレキング

日当たりのいい南側に薪棚を増設した。日当たりがいいとはいえ、川に面しているので実際のところ十分に乾燥するのか、まずはこの半年で実験だ。軒下なので雨掛かりは心配ないのだが、軒先からの雨垂れが犬走の表面で跳ね返って、下の方の薪がびちゃびちゃに濡れてしまうのが難。まずは雨垂れの当たる部分に斜めの板でも設置してみるか、と検討中。ほかにも人工芝(最近の良くできたヤツは天然と見分けがつかない)を敷くとか、そもそも雨樋をつけよう、とかいろいろと画策中。。と、ふと棚の裏を覗いてみると時折見かける、我が家では「先生」と呼んでるでっかいヒキガエルが鎮座ましましていた。このお腹の柄、まるでエレキング!きっとウルトラマンの怪獣デザイナーはこれをヒントにしたな。



デッキのメンテナンス

我が家の外周りの木部は全て木部含浸系の天然塗料仕上げだ。垂直面は10年くらいはそのままで大丈夫だそうだが、水平面はさすがにそうもいかず、デッキは丸3年を経て結構傷みが目立つようになってきた。特に雨樋の無い軒先からは夏でも夜露がしたたるので、その直下はかなり塗料が剥がれて木部が露出してきた。塗料はこれ。
 やや値は張るものの、自然塗料で耐久性もあり、塗り増しすることで耐久性も高まり、含浸系なので塗りムラにもなりにくく、とても使いやすい塗料だ。テレピン油(今回は天然採取のイイやつ)で希釈して刷毛でゴシゴシ。これであと3年は安心。「3年」をどう評価するかはさておき、手をかけて徐々に風合いが出てくるあたりはどこか漆にも似ている。

2013年8月3日土曜日

くじけたわけではないけれど



 薪割り機を買った。これまで全量、人力で割ってきたが、今年は割り時期の5,6月が忙しく、かつ雨も良く降ったので、割り残したまま夏を迎えてしまった。これから人力で割るには暑すぎて体力的にキツいなあ、と思いつつ、薪割り機も安い道具ではなく、それにかさばるので置き場所もなぁ。。とグズグズしてたところに嫁さんの「買お」のひと言に背中を押された。

 この手のトルクの必要な機材はエンジンでしょう、と思っていたが、知り合いによるとこの機種が思いのほか使えるようで、使い勝手もいいとのことで電動にした。実際に使ってみると安物にありがちなフレームの「よれ」もなく、斧では歯が立たなかった筋張った節がちな丸太もメキメキと割ってくれる。ゆっくりとした動作で人力よりも効率は悪いかな?と思ったが、小一時間でこれくらいの山ができるということは人力とほとんど変わらない。ないしろ肉体的な疲労がないので、コンスタントに続ければ圧倒的に人力よりも早く割れる。こいつがスグレものなのは基本的にとてもスリムなだけではなく、車輪を軸にひょいと一端を持ち上げるだけで直立で自立してくれるので置き場所に困らないことだ。自重は76kgあるものの、車輪もしっかりしているので、ころころと引きずっていって好きな場所で使えるのも○だ。あとは耐久性だが、こればっかりは来年以降の評価を待つしかない。斧で割るあの快感も捨てがたいが、夏場の薪割りは文明の利器に任せよう。


2013年7月14日日曜日

変身!

 初めて間近で見た。蝉の羽化。この時期、あちこちで抜け殻は見るし、その近くに抜け穴もポコポコ見かけるが、蝉の羽化は真夜中、という意識があったので、その瞬間に立ち会えたことよりもむしろ、その時間帯に驚いた。こんな真っ昼間に!羽のまだらな感じと大きさからするとニイニイゼミのようだ。ふと脇を見るとこれからオレも!というようなサナギがトコトコと高みを目指して石をよじ登ってた。夏だ。


2013年7月7日日曜日

拭き漆祭り

 ジメジメした季節なのでひどくならないうちに風呂場のカビ対策をしていたところ、框の保護?のアルミアングルがパコパコ外れかかっているのを発見。思い切って取り外してみると、固定していた両面テープの厚みにできたすき間から水がまわったようで、隠れていたところがジュクジュクに黒くなっていた。幸い腐ってはいなかったものの、このままではいずれ。。ということで拭き漆で防水対策。もともと施工の際に見切りとなる框はあとから自分で処理します、といって白木のまま放っておいたもので、ひどくなる前に発見できてよかった。さすがに梅雨時、半日で2回の拭き漆がばっちり硬化。やや黒目に仕上げたので、見切りがはっきりして足元が締まった感じに仕上がった。写真ではまだ生乾きで斑になってるが、日に日に馴染んで落ち着いてくるだろう。アルミのアングルも、いずれすき間を作ることになるので、思い切って外したままで、代わりにすき間にはこってりとシリコンコーキング充填。

勢い余って?以前からやろうと思って先延ばしにしていた、まな板と籐籠も拭き漆で坊カビ対策。手触りも良くなるのだ。ああ、漆のこの万能感よ!