2011年12月31日土曜日

リビングの調理器具

 なんといっても静かでたまらなく暖かい薪ストーブ。冬には山に入って楢や桜を切り倒し、春先にはそいつらを玉切り(40センチくらいずつに切り分ける)にして軽トラで山から運び出し、片っ端からひたすら薪割りしてやっと燃料が手に入るというなんともめんどくさい手続きが必要なのだが、それと引き替えにこの心地よさが得られるならそれほど苦労とも思わない(人によります)。むしろチェーンソーのメンテや斧や鉈の仕立てなど道具を使う楽しさがあって、薪つくりはもはや趣味といってもいい。さらに薪ストーブは時として調理器具にも変身、ポンテベッキオのピザも店で食べるよりもきっと美味かったはずだ。さらにおせち料理に欠かせない黒豆も期待以上にキレイに煮上がって年末にも大活躍。

 震災の直後はインフラが落ちてとにかく多くの方々が困っていたのが暖を取る手段だ。ガソリンと同じく灯油も手に入りにくい状態だったし、停電だし、プロパンはあっても電子制御のタイプは停電でアウト。。いろいろと困ったことはあったけども薪ストーブのおかげで震災後のあの寒さをしのげたのは本当に助かった。寒さに震えていた近所の方々にも夜にはうちに来てもらってみんなで火を囲んでいると気持ちも和んでとても心強かった。

 もはや他の暖房器具には戻れない体になってしまったオレ。


2011年12月19日月曜日

復活

20数年前に初めて買ったクロモリMTBのフレームを残しておいて良かった。今や主流のファットなアルミやカーボンのフレームもいかにも最新っぽくてイイのだが、やっぱり細いクロモリフレームの凛とした佇まいはいつまで経っても失われないものだ。ということで、時間を見つけつつ組んだのがこれ。我が家のオーナーご本人は知る由もないが、往年の名パーツをごっそり組み込んである。オリジナルの塗装をはがして新たに真っ白にウレタン塗装したフレームに初期型XTRのRD&ラピッドファイアーシフター、ロー側3枚がチタン製のXTRカセット、いまは亡きSRサンツアーの名作XCプロMDのクランクセットに、WorldClassのBB、ホワイトインダストリーのリアハブと、いっそ自分が乗りたいくらいのパーツ群がさりげなく組み合わされているのだ。今から15〜20年前は第一次MTBブームの時期で折しも冷戦終結後に業態移行を迫られた軍需産業が持ち前のカーボンやチタンの超精密加工技術をひっさげて自転車業界に乗り込んできた時期で、ブレーキやハブを専門に作る多くのサードパーティーで業界は活況を呈していた。そんな当時を懐かしみつつ、必要以上の精度で作られているのが幸いしていまだにガタもなく滑らかに動いてくれるパーツを丹念に磨いたりしていたら、組み上がった途端に初雪で試乗はしばらくおあずけに。ウチの周りの未舗装部を考えるとタイヤがちょっと細いかな?なのですでに1.75サイズを発注済みでこのすっきりした姿は今だけ。ちょっとおもしろいパーツ(?このカエル、目がチカチカ光るのだ!)も見つかって初乗りが今から楽しみ、自分のじゃないけどね。



2011年12月8日木曜日

誰でもできる拭き漆

肝心なことを書くのを忘れていた。我が家は連合設計社市谷建築事務所に設計していただいた。住まい方や仕事場としての使い勝手など空間的な性能の検討は当然ながら、僕、そして設計の中田千彦氏はさらにその空間の「質感」にとても拘りたかった。なかでも床については以前から自邸は拭き漆で、と心に決めていたので最初から全ての平面部分は拭き漆と仕様が決まっていたのだが、さて、では調達はどうするのか?という問題があった。単純に拭き漆として仕上がっている建材を買ってくるとべらぼうな値段になってしまうし、なんといってもどの建材もこってりと漆が塗ってあり、品がないといったらない。なのでそもそも「買う」気なんてさらさら無く、自分でやってしまおうと目論んでいた。ただ、総計150平米もある床を1人で出来るわけでもなし、さりとてボランティアをお願いするにしても作業にともなって漆にかぶれたらマズイな、と思案していたところに社長の鶴の一声「では所員がお手伝いします!」ということで、所員さんも「是非に」とお申し出頂いて皆さんでやっちまおう!ということになった。

万全のかぶれ対策をしたところ、まあなんとも物々しい佇まいだこと、お互い笑ってしまったが、今なら(作業は今から2年前)あんまり笑えない姿だ。結構な匂い(漆は生だとかなりクサい)をまき散らしながら白装束で黙々と作業を繰り返す姿はかなり怪しい雰囲気。下地1日、漆2日間で床材150本なんとか目標達成。三日間で徐々に皆さんの段取りも良くなってきて予想外にスムーズに進んで、しかもかぶれも無くひと安心でした。しかし、折角の三連休をつぶして汚れ作業に来て頂ける、しかも東京から、普段から設計のお仕事をされているとはいれ、直接現場作業をすることは希だろうし、勝手も分からない、しかもかぶれるかもしれない恐怖をおして来て頂いた皆様にはほんとうに感謝の言葉もなかった。逆に「貴重な機会を与えて頂いてありがとうございます」なんて言われると体が縮んでしまうほど恐縮したのでした。
拭き漆は木に漆を擦り込んでいく作業の繰り返しで、普通の塗装や染料と違って徐々に木肌に馴染んでいく感覚にみなさんお気づきだったようでした。

今回は費用の関係でやむなく中国産漆を使ったが、おとなり岩手県には漆の産地浄法寺があり、山形でも日本産漆が栽培され収量を増やしつつある。浄法寺の漆は今年のグッドデザイン賞を取ったことだし、いずれは地産地消(もちろん他消でもいい)的に東北の漆を東北の住宅で、というような取り組みにつなげて行けないものだろうか、などと考えてみる。なにせ、この循環型社会を目指すご時世に、漆ほど適った素材もないのだから。

黙っていればそれとは分からないほどに現代の建築に馴染んだ漆の床は、手触り、足触りがすべすべと良く、なんといっても漆の天然の抗菌作用のおかげで年中清潔で快適で、そうだ、これはもっと広くみなさんに知ってもらおうということで、機会がある毎にお見せして説明してきたのだが、ついに東京のある保育園の床を拭き漆で仕上げることになった。園長先生も設計者もとても気に入って下さり、子供のためにとボランティアを申して出てくれる方もでてきて、いよいよ来週から東京某所でワークショップ形式でみなさんで作業と相成りました。拭き漆の体験をしてみたい方は是非ご連絡下さい。


2011年12月5日月曜日

漆の実でコーヒーブレイク

 先日、山形に漆の実を取りに行ってきた。漆の実は主に馬の飼い葉に入れて強壮剤として使われてきた。他にも昭和30年代頃までは蝋燭や鬢付け油にも使われていたという。もちろん今やほとんど生活に関係するものとしては使われなくなったが、なんでも種の部分でコーヒーが飲めるというので、日本漆総合研究会の蜂谷哲平さんのご案内で山に入ってきた。
県庁で待ち合わせの後すぐそこに見えている山まで車で約15分、さすが山形というだけあって山に囲まれた典型的な盆地であっという間に現場の里山に到着。この市街から里山まであっという間、という感覚はとても京都人にとっては自然な感覚だ。
漆の実は成るものと成らないものがあり、それが男木・女木に依るというわけでもないらしく、さらに今年は成っても来年は成らない、など、なんとも神秘的?なものらしい。高枝ばさみでちょきちょき、あるいはよじ登ってポキポキ枝ごと取ってとって2時間ほどで広げたブルーシートがいっぱいになった。このあと専用?の洗濯板のような道具で実の件の蝋の部分をごりごりと削り落として種だけをより分ける。その後手鍋で煎ってミルで挽いたらあとはまさにコーヒー然とパーコレーターやドリップで淹れる。味はう〜む、なんとも雑味全開というかエグ味というか、かなり独特ではあるものの、香りは十分に芳醇で香ばしく、アウトドアということも手伝ってなかなかの風情でした。煎り方や淹れ方の工夫でもっと美味しくなる余地はあるそうで、産地では喫茶店で季節限定で飲めるところもあるらしい。あ、漆の実のコーヒーといってもこれを飲んでもかぶれませんのであしからず。