2013年6月3日月曜日

関係を調整する仕事

この1年ほど、ある木造の建築賞の客員審査員を務めてきた。インテリアや建築空間のアートワークなどで建築の現場の仕事はするし、研究活動でも建築家とのお付き合いもあるし、なにかと建築と関わることが多いとは言うものの、建築作品そのものを専門的視点から評価できるわけではない。それでも、住空間に漆を活かした暮らしをしているという視点で忌憚のない意見を聞きたい、ということでお声がけ頂いた。お世話になっている先生からのお話だし、いい経験かと思ってお請けした。

書類審査に始まり、公開プレゼンテーション、現地審査に最終審査会と、この半年ほど、いつにも増して建築についてじっくり向き合う機会があった。

森林面積が7割の我が国で、国産木材が過小評価されていること、エネルギーのこと、建築を軸に地域が繋がる、その繋がり方が変わるだけで地域に眠っている、またはうまくまわっていないリソースが再び機能しはじめる事例など、たくさんの「建築」の事例に出会った。わかってはいたつもりだが、あらためて建築とは、単なる技術ではなく、関係を調整する仕事なのだと思う。それは利害だったり、環境だったり、人と人だったり、人と空間だったり、その関係の在りようは様々だが、とにかくその関係を調整しまくる仕事なのだ。それも創造的に。

光栄なことに、各賞のトロフィーを制作させてもらえることになった。木の建築に対する賞とはいえ、単純に木材で作るというのも芸がないし、なにより漆の多様な姿を感じてもらいたいと思って、朱塗りの台座にたこ糸を漆で球状に固めた線状乾漆(そんな用語はありませんが)が鎮座するという構成に。台座には本体の球の曲率にぴったり合った彫り込みがあるので、また本体のアクリル板の銘板がそこそこ重量があって起き上がりこぼし的に安定もするので、以外と「すわり」はいいのだが、授賞式ではみなさん、授与される際に恐る恐るという手つきでした。緊張の場面で気を遣わせてしまってすみませんでした。でも、飾るだけでなく是非手にとって漆の肌触りを感じてもらえれば、とスピーチしてきました。受賞者のみなさま、本当におめでとうございました。 

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