2013年6月11日火曜日

工芸にこそデジファブの力を!

 3Dプリンターが話題だ。最近メディアで取り上げられることも多いこの技術は、コンピュータで設計した3次元のかたちをそのまま合成樹脂などの立体物として造形するというもの。パソコンのモニターに映し出される単なる情報としてのかたちを、実際のものとして手に取ることが出来るということで「魔法の技術」として紹介されることも多いようだ。
 近年こうした機材が個人でも買えるような価格になり、デジタルファブリケーションとも呼ばれる、パソコンと連動したこれらの機材を使ったもの作りが身近になってきた、、とはいえ、全ての人にとってすぐに始められるものでもなく、まずは体験ができる市民工房のような場所が世界中に立ち上がっている。
 ここ仙台にもつい先日、仙台駅前に工房がオープン、さまざまな人がさまざまなもの作りを実験的に行い、インターネットを通じてその経験や工夫を世界中の仲間と共有して、新しいもの作りの可能性を探っている。
 パソコンのプリンターは家庭を印刷所に変えた、とも言われるように、デジタルファブリケーションが家庭を小さな工場にする可能性を秘めているという研究者もいる。個人のもの作りの在り方を大きく変えるかもしれないこの技術は、実は工芸職人さんにとって、とても大きな可能性を秘めている、と僕は予測している。

 工芸は手を尽くしてもののたたずまいを整える仕事だ。パソコンでいくら簡単にものが作れるとしても、実際のものが手触りやたたずまいにおいて魅力的でなければ、それには価値がない。この点でこうした工房の運営者の多くが、工芸技術との取り組みを切望している。一方で、職人さんたちにとって、これらの技術はどこか縁遠いものと捉えられがちのようだが、この人たちにこそ使ってもらいたい。
 現在、東京藝術大学陳列館にて、「Materializing展」が開催中だ。「情報」と「物質」のもはや不可分な関係を、様々な事例展示を通して探る展覧会だ。23組の建築家やデザイナーといった出展者の中で唯一の工芸家として、僕も参加している。工芸とデジタルファブリケーションの事例として、新しい工芸の可能性として道が拓ければと思う。

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