2013年11月9日土曜日

ないものはつくる

 宮城県には漆塗りの文化財が多い。にもかかわらず、修復に使う漆を生産していない。これは困ったものだということで、宮城県で国産漆を育てようという取り組みを始めたことは以前にも書いたかも知れない。ウルシ(樹木としての漆はウルシと書く)の木は江戸時代には「畑の五木」などと言われ、桑や茶などとともにもともとは人里近い平地に植えられていた木だ。ウルシは生産性が低く、かぶれるなどの理由から山林へ追いやられてきた。現役の漆掻き職人さんたち(いずれも70-80歳という高齢)でさえ、ウルシは山の木だと思っている方も多いという。つまり、それくらい長い時間、ウルシは誤解されてきているということだ。
 ウルシは浅く広く根を張る樹種で、つまり、地上では広く枝葉を広げる木だ。ところが山林では木が密集していて枝葉を広げられずに、つまり、根が広く張らずに上へ上へと細く長く伸びるしかない。本来の生育状況とは違う状態の木は決して本来の性質を保っているとは言いがたく、病気の原因ともいわれている。広間隔(8-10m)でゆったりと植えればノビノビと育ち、樹間の下草刈り(山林ではこれが重労働)もゴルフ場や果樹園で使われる乗用草刈機を使えば楽ちん、漆が採れるようになるまでの数年間は、ワラビなど他の作物栽培も可能、近い将来には山の宝ともいうべき漆が採れる。。。と良いことづくめなのだが、問題は場所の確保。10m間隔で100本植えようとするとそれだけで1haが必要になる。かぶれる心配もあるのであまり人里に近いところは避けたい、と条件を考えていくとなかなか理想的な場所というのは見つからない。
 そこで思いついたのが震災によって耕作放棄された沿岸部の土地だ。幸いというか、浸水した地域からは人の営みは離れつつあり、でも賑わいは取り戻したいという地域の方々の複雑な思いにうまく寄り添えるのではいか、ということで地権者の方々に相談してみたところ快諾を得て、いよいよ年内にウルシを植えられることになった。
 場所は山間の扇状地で日当たりもよく山からの豊富なミネラルを含んだ水はけの良い土壌で、技術協力してもらっている研究員によればまさに理想的だ。今日はまずは整地、に先だつ立木伐採、に先立つ除草作業。4人がかりで半日で終了。草が枯れるまで二週間ほど待って、次は立木の伐採。整地というほど荒れてないので伐採が済めばおおよその準備完了。別に育てているウルシの苗木が落葉するのを待っていよいよ来月には植樹だ。

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