2013年3月11日月曜日

舟大工vs.家大工

 「うぶすなの家」に行ってきた。2004年の新潟県中越沖地震と豪雪で打撃を受けた民家に活力を呼び戻そうと、「大地の芸術祭2006」で「やきもの」をテーマに再生されたそうだ。1924年(大正13年)築の茅葺屋根の古民家。筑波大学安藤邦廣教授の再生計画によるもの。地震でやや傾いたものの、躯体はしっかりしており、一部に木構造を挿入してレストランや美術館として機能している。圧巻はなんといっても越後の積雪に耐えた根曲がり材の梁だ。どう見ても図面が存在しそうにない、再現不能な、でも釘を使っていないから移築の可能性を内包する、すばらしく精緻で、それでいて力強い造形だ。通り芯程度の図面(と呼ぶほどのものさえ無いのかもしれないが)さえあるのだろうか?各部屋の配置と大きさ程度が決まればあとは大工が材料をにらみつつ、適当(もちろん”いいかげん”という意味では無く)に材料を配置していってできあがった、ある種の即興的なスピード感と精度を感じる。以前に木造和舟の復元制作をやったことがあるが、その時見学に行った船大工のおじいさんの手際もまさにそういう即興的なもので、帰ってから見たままにやってみたところ、材料どうしが全然合わず、あらためて手に具わった技術の凄さを痛感したものだが、この家の大工さんの技もそうしたものの一つだろう。ほとんど曲線ばかりで高度な技術が必要な舟大工の方が家大工よりも格が上だという話を聞いたことがあるが、なかなかどうして、まさに舟のミヨシ(舳先のことミ:水押し)のようななんと呼んでいいのか分からない部材は迫力満点でした。



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